シナリオ=B|グラフィック=A|キャラ=B|音楽=S|総合評価=B
まず、このゲームかなり好きです。他のとは一線を画すくらいに。
特筆すべきは音楽。これは素晴らしい。さすがはElements Garden……SHUFFLE!のムービーでも同じようなことを言ってたような気がしますが。以前は音楽やムービーじゃない、大事なのはシナリオとキャラだーとか思っていましたが、最近は音楽とムービーも同じくらい重視する傾向にあるみたいです。
そして何と言っても絵!
特に知夏!
……こほん。え〜、システム面での不備はなし。右クリックしてメニューを出すと左上にヒロインのアイコンが出て、そのルートにいるキャラが明るく表示されるのは面白い。また、そこでクリア済みのキャラにはClearと出ます。
非アクティブ時オートモードもOKと、システム関係ではまったく問題ありません。
香川県観音寺市をはっきりと舞台に特定しているのも珍しいですよね。ていうか、FrontWingの作品って結構四国が舞台になってるものがあるんですが、何かあるんでしょうか?
……ちなみに観音寺市は私もよく行きますが、あそこまで田舎じゃないですw
さて、問題となるのは主人公である道隆の設定。感情が薄い、ということになっていますがゲームを進めているとそんなことは全く感じず。その設定は最後のたまねえシナリオの反魂の術関連で意味が出てくるんですが、伏線にしてももうちょっとその設定を活かしたキャラにした方が良かったんじゃないかと思います。
あとは、モノローグでは「僕」で台詞は「俺」など、道隆のキャラが揺れているのも気になりました。
素晴らしいのは、雰囲気……って言うのかな、この手のゲームは夏か冬ってのが多いですけど、「そらうた」ほど夏の雰囲気を上手に醸し出しているゲームは多分ないですね。音楽と言い背景と言い、冬にプレイしようが問答無用で夏の雰囲気に引きずり込むくらいの凄さがあります。
……知香とか朋佳とかじゃなく「知夏」なのはそのヘンもあるのかな?
後は、全体を通したシナリオの構築ですか。共通ルートからたまねえシナリオまできちんと練られているなあ、と。その分、ルート中での主人公の設定があやふやになっちゃったのかも知れませんがw
幽霊が見える、感情が薄い。上述した道隆の設定ですが、これが活かされていないのはいいとして、ストーリーそのものも最後までプレイしないと完全に納得するには至りません。「そらうた」は全キャラ攻略して初めて「面白い」と言えるゲームなんですが、途中で「え?ちょ、たまねえ失踪は結局何だったわけ?」と思ってしまうほどあっさりスルーされてしまう伏線をどう考えるかですね。
それぞれのシナリオはそれなりに面白いですから、設定と道隆のふらつき加減に耐えられればプレイするに値するゲームだと思われます。と言っても、両方ともプレイする気力に差し障りがあるというほどのものではありません。
エンディングは葵シナリオのみハッピーエンドではありません。いやだってそりゃ……守護霊になったってだけじゃ、とてもハッピーエンドとは言えないんじゃないか、と。もう1人、バッドエンド確定組と思われた幽霊である真奈がしっかりハッピーエンドで終わったので、安心していたらすっかり葵でやられてしまったという感じ。この辺はお勧め攻略順に影響しています。
後はハッピーエンド。特にお勧めのシナリオはやはり、道隆のヘタレ具合がいい感じにムカつくけどギャグも面白く、シナリオも核心に迫り、キャラクターはもう完全にダントツ勝利の知夏シナリオと、全ての謎が解けるたまねえシナリオでしょうか。
幼馴染で天然暴走系の知夏、姉代わりのボケ従姉妹の霊子、幽霊な真奈、その真奈の親友で引っ込み思案な澪、不思議系少女で実は大昔に死んだ霊が入り込んでいる葵、の5人がヒロイン。
サブキャラとして保険医の薫先生と担任の冴木先生がいますが、この2人がどう関わるかと言うと、
めっちゃ関わってるよ、オイ
道隆の友人やクラスメイトなどがまったく登場しないので、ある意味潔いゲームだなとか思っていたんですが、数少ないサブキャラが物語の超根幹に超関わってるってのも凄いです。
でまあ、メインヒロインたちなんですが、霊子はいいお姉さん過ぎてえちぃシーンとかはちょっときつかったです。澪は大人しすぎて何だかなぁだし葵と真奈は幽霊だしw
やはりダントツで知夏ですよ、ええ。もうね、元気で天然で暴走で明るくて一途で健気で……あらゆる要素をすべて持っていると言っても過言ではないでしょう。
「普通の味なんて、わたしにしたらすごいわよね。いつもは、味というより痛覚だもんねー」
「まあな。あれは一種の兵器だからなあ」
「まじ、四式味覚兵器だもんね」
自分で言ってへこむ知夏萌え。
このシナリオに関しては、伏線み見事でした。知夏(ちか)とゲーム中でも音声でも言っている(知夏本人もそう認識しているらしい)のが、本当は知夏(ともか)と呼ぶというのがさり気なく出ていて、しかもそれが後々でクライマックスの、更にサブキャラに絡んでくるとは。
「わたしの胸は、潜在的なパワーを秘めてたのよ!」
「わたしは過去を振り返らない女の子なの!三歩歩いたら、すべてを忘れるんだから!」
「だから、お弁当できました。眠いのに気付きました。冷蔵庫入れました。わたし安心して寝ました。完璧」
知夏って、SHUFFLE!の楓やALMAの香苗とは方向性が違うけど、それに匹敵するというか、どこか妄想爆発系なのとおバカで抜けてるとこが、他の幼馴染ヒロインをぶっちぎって……
キング・オブ・幼馴染ですね(笑
いろんな謎も解け、知夏シナリオで撒いた伏線もきっちり回収し、非常に良かったです。
あ、それと、霊子シナリオで最後に出てきた「トモカ」が、まさかあの子だったとは。ヤラレマシタ。
ハッピーとは言いきれないエンディングがあるとは言え、どれもプレイ後は晴れ晴れとした感じがする、良作であると思います。登場人物が少なく、クラスメイトとか町の人とか友人関係とかの絡みがありませんので、あまり学園ものって感じはしません。あくまでもヒロインたちとの交流、がメインだと考えればいいのでは。
王道が好きな人、伏線を最後にどど〜んと明かすのが好きな人にはかなりお勧め。
霊子は4人を攻略後のみです。
澪→真奈→葵→知夏→霊子
澪と真奈は逆でもいいかも知れません。