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今回短いです。

ToHeart2 - 郁乃との日々・番外編の壱 〜郁乃とこのみ編〜

書いたひと。ADZ

それを手にして、私は躊躇していた。
それは優れた物と言えるし、これを使えば今よりもずっと私の見た目が良くなる。
私の隣ではこのみも同じものを手にして、同じように動きを止めていた。
ふと視線を横に向ければ、彼女も同じように私へとその視線を向けてきた。

「……いくのん」
「このみ……」

お互い覚悟を決める事も出来ないまま、声を掛け合う。
それを使う事は、何か取り返しの付かないことのような、そんな気がしていたから。
それでも、それでもこの日この場所に来たのはそれを手にするため。
残されたわずかな希望にすがるため。

やがて覚悟を決めたのか、このみは普段よりも強い光をその目に宿し、レジに並ぶ。
今なら言える、あの子はきっと勇者だ。

他にも人がいる中で、あんなにも堂々とそれを買う事ができるなんて。あまつさえ店員さんにコツまで聞いてしまうなんて。
私は、私には出来ない。そう思っていた。けれど、それでも。私にも諦められない事もある。
だから私は、それを。その逸品を手に、レジに進んだ。

遠く、その店の出入り口近くに立つこのみが、やり遂げた人間の顔をしていて眩しかった。
会計を済ませて合流する私たち。互いに言葉はなく、ただ頷きあうのみ。
青空に輝く太陽の強い日差し、それは私たちを祝福しているのか嘲笑うのか。
私たちはひとまず、このみの家に向かった。

小一時間過ぎ、このみの家に着き春夏さんへの挨拶をそこそこにこのみの部屋に向かい、私たちはそれを包みから取り出した。
女の子同士とはいえ恥ずかしく、背中向かいになって服を脱ぐ。
手にしたそれを身につけ、姿見で私たちはそれを確認する。
効果はてきめんだった。思ったとおりの逸品、いや想像以上に優れた物だった。
だが、何故だろう。酷く、酷く空虚な思いがその胸を流れていくのは。

それの効果がすばらしければすばらしいほど、どうしてこんなにも敗北感を感じるのか。

「このみ、私たち間違ってない、間違ってないよね? これを使っても、みんな許してくれるよね?」
「大丈夫だよ、これでやっとみんなと同じ舞台に立てる、そんな気がするもんっ!」
「そうよね、そうだよね。ううう、なんでだろう、涙が……」

それが空々しい事は分かっていた。それを使うという事は、認めることなのだから。
私達にはあれが不足していると。

「きっとタカ君もびっくりしていくのんに視線釘付けだよ」
「ヤ、そこでなんであいつの名前が出てくるのよ。それにこれで釘付けになられても悲しいから」

お互いなんだかわけの分からないままに、ただ認め合った。

いわゆる天使の谷間ブラとかそんな感じの商品名のそれを身につけた、お互いの胸元を。

「ううううう……でもやっぱりどうしようもない敗北感が……」
「このみもであります隊長どの……」

ドアの向こうで春夏さんがジュースとお菓子を載せたおぼんを手にしたままに、困り果てている事に気付くのは、しばらく後の事だった。

後日待ち合わせてのお出かけの時の事。

「貴明、待たせたわね」
「いや、待ってなんて…………なんだ郁乃の偽者か」
「マテコラ今どこ見て言った」
「ふぅ、今日は蝋人形館にでも行くか」
「無視するなっ! それとんなとこ行きたくないわよっ!!」

やっぱり着けて来るのやめとけばよかった。女の見栄が恨めしい……

さらに後日。

「このみにいくのん。ある日突然大きくなるわけが無いのだから、いきなり使うべきではない。少しずつパッドの厚みや数を調整して違和感をなくし、それから谷間くっきりが望ましい」
「なにを言ってるっすかねこの眼鏡は。いいっすか二人とも。小さいほうが可愛いと自分は思うわけっす。だから」
「よっちは黙ってろ」
「黙っているでありますよ」
「黙ってなさい」

「なんだか自分目の敵にされている気がするっすよっ!?」

当然でしょうがこのナイスバディめ。

「いいじゃんか、俺なんかそーいうの使っても谷間できねーんだぞっ! だがこのロリロリボディでたかりゃん悩殺?」

いたんですか先輩。出口はあちらですからスズメバチに追い立てられるようにお帰りください。

「なんだかいくのんデストロイッ!? 抹殺か? 抹殺対象なのか俺っ!?」

なんですかそれは。

終われ。

今、後書ける時。

こんにちは、ADZです。
壱になってますけど特に弐とか無いのであしからず。

さて今回の物は七月、あるいは八月に投稿予定で書いていたものがいまだ書き終わらない中、唐突に受信したネタで小ネタを書いてみたりしたものです。
いや今何月だよ私。

しかし…………いいのでしょうか、こんなネタ書いても。

それではツッコミその他が怖いので今回はこの辺りで失礼いたします。

ではまた、いつの日にか。

今、駆け抜ける時。(逃亡的な意味で)

はい、らいるです。
サバトや掲示板で小ネタをちょこちょこと出し続けるADZさん。集めれば結構な量になりそうなw
これも掲示板に投下されていたネタですね(今は削除してあります)。途中で「これは」とネタが分かったのにも関わらず、結局笑わされてしまい、悔しかったのでアップしました。何かこう、自分だけがそうなるのは何かに負けたような気がするので。
え?私?小ネタも出ませんが、なにか?

ADZさんへの感想や励ましなどは、
nao-sあとyel.m-net.ne.jp
へどぞー。