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ToHeart2 - 夏影その後(没)
書いたひと。ADZ
最近あいつは私を家に招かなくなった。そしてお弁当を持参するようになった。
それも明かに手作り。
まさか、まさか……浮気!?
少しでも疑いを感じると、いてもたってもいられなくなり、あいつの家に強襲をかけた。そして。
「ご、ご主人様っ!!この女の子はられなのれすかっ!シルファにらまってそんな、そんな、なんとか条例にひっかかりそうな女の子を連れ込むらなんてっ!!」
「私はこれでもここのへっぽことは一つしか違わないわよっ!! で、あんた誰?」
「シルファはシルファなのれすよ。ご主人様専属のめいろろぼなのれす。ちみっこは何しにきたれすか?」
「ちみっこ言うなっ!」
「何しにきたれすか?」
「そ、それは」
「ぴっ!? ま、まさかご主人様の貞操を奪いにっ!?」
「まだしないわよっ!!」
「まら? ねらっているのれすね、このちみっこ」
「ね、ねらってなんて……って、だから誰がちみっこよっ!」
「ちみっこ」
「指差すなーーーーっ!」
「ちみっこ一名さまお帰りれ〜す」
「ちょっ、押すんじゃな——胸を触るな〜〜〜っ!!」
「おや? あまりの平べったさに気付かなかったのれすよ」
「こ、このぉおおおっ」
「おーい、何玄関で騒いで……イクノサン?」
「ちょっと貴明! この娘なんなのよ、ていい加減胸から手を離せーーーっ!!」
「胸? おや、ここも胸らったんれすか。それは失礼」
「しなーすっ!!」
「……あぁ、またご近所に変な噂が……うぅ……」
「黄昏てないでこの娘をどうにかしなさいよっ」
「あ、うん。……あー、とりあえずその手を離してくれないかな? シルファちゃん」
「はい」
「……ちゃん?」
「えっと……なにか問題あったかな郁乃?」
「……シルファ……ちゃん?」
「なんれすか、ちみっこ」
「ちょ、シルファちゃん、ちみっこって……」
「……へぇ〜」
「あ、あの……い、郁乃……さん?」
「随分と仲がお宜しいようで」
「え?」
「それはとうてんれす。シルファとご主人さまはしっぽりれすから」
「……変態、鬼畜、外道、貴明の浮気者ーーーーーっっっ!!!!」
「盛大に勘違いして人聞きの悪いこと口走りながら走り去るなーーーー! て、シルファちゃん、どうしてあんな嘘を!」
「うそ? シルファ、うそなんて言ってないれすけろ」
「しっぽりした事無いから!?」
「? さっきまれらってしっぽりお茶してたじゃないれすか」
「日本語の使い方間違ってるから、それっ!!」
「そーなのれすか?」
「く、とりあえずその話は後! 郁乃ーーーっ!!」
取るものとりあえず玄関から飛び出し郁乃を追いかける貴明である。
「……先手必勝。良い言葉れす」
ニヤソ、とシルファが笑ったかどうかは神のみぞ知る。
「郁乃っ!」
「来ないでよっ!!」
「とりあえず逃げないで俺の話を聞いてくれっ!」
「自宅に別の女を連れ込んで変態行為をするようなヤツの話なんて聞きたく無いわよっ!」
「変態行為!? 違う! 誤解、誤解だってば!!」
「五回も六回も無いわよっ!」
「良いから全速力で逃げるなーーーまだ身体に障るーーーー!」
「だったら追い駆けてくるなーーーっ」
「……何アレ」
「貴明と……郁乃ちゃん、だったような……」
チョイ役・向坂姉弟のお二人。
「だから、誤解なんだっ!! シルファちゃんは珊瑚ちゃんたちの所のイルファさんの妹で、うちで試験運用してるだけなんだってば!!」
「だから何よっ! あんな、あんな可愛い子と一つ屋根の下だなんて、何もないなんて思えるわけないじゃないっ!!」
「あの子は俺にとって妹みたいなもんなんだよ、その、な。俺は郁乃が一番大事だから」
「貴明……」
抱きしめあう二人。途中が面倒で端折ったとかいうのは秘密だ。
「あ、あの、貴明さん?」
「うおちゃっ!? イ、イルファさんいつからそこに」
「たたたたた、貴明さん。そそそそそのかたとは一体どのようなご関係で? 珊瑚様たちのご学友なのはわかっていますええ。私はシルファちゃんの様子を見に行く途中だったのです! そしてお泊りに雪崩れ込んで夜中にこっそりお布団の中に潜り込んで夜明けのモーニングコーヒー計画の発動をっ!」
「あ、今まで言った事なかったですね。えーと、夏の間にあー、その。恋人という間柄になりました郁乃です、てまてこら今あんたなにほざいたっ!」
「恋人っ!? AとかBとかCなんてしちゃう恋人っ!! ラブラブで石○天驚拳でラスボス撃破!? そ、そんなっ!! このままでは貴明さんの初めてをいただきつつ私の初めてを貰っていただく計画がっ!!」
「まてそこのイケナイメイドロボ。なにを計画してますかあなた」
「タカアキ……イッペンシンデミル?」
「冤罪だーーーー! それとその赤い紐が結ばれた藁人形どこから出したっ!」
「やっぱり貴明さんはつるんでペタンな方がいいんですねーーーーー!!」
「誰が貧相かーーーー!!」
「うわーい物凄く人聞き悪っ!?」
「こうしてはいられません、研究所にマルチ姉様と同型のボディを用意していただかないと」
「もう何がなんだかわけ分かんねーっ! 誰かたーすーけーてー!」
頭を抱えて救いを求める貴明であった。
「ふふふふふふふ。イルファもヒッキーSも小娘も全て蹴散らして私が貴明の初めての人に……」
そして電柱の影から目を光らせて何かたくらんでいるミルファもいたりするが、まあどうでもいいや。
終われ。
嘘予告★
立ちふさがる彼女を前にしても臆することなく睨み返し、自身の身体の調子を確認していく。
腕の可動、OK。
脚の可動、OK。
各部反応、正常。
動力の過負荷確認。予備電源も問題ないはずだ。
視覚センサー、聴覚センサー、出力調整全てオールグリーン。
負けるとは思わない。だが勝てる気もしない。
目の前に居るのは自分と同系のボディユニットを持った相手。
大きな差は無いが、各部パラメーター設定は細かく違う。
短所を自覚しろ。長所を自覚しろ。自分に有利な点を、不利な点を洗い出せ。
一度眼を閉じてゆっくりと開く。
目の前の相手は余裕の笑みを持ってその視線を受け止める。
柄を握る手に力が入る。
何としてでもこの相手を下し、ご主人様と慕う彼の元に辿りつく為に。
「マルチ義姉さまっ! シルファに力をっ! とぉりゃーーーー!!」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄っ! セリオ義姉さん直伝の崩拳の実験台にしてくれるわっ!!」
なんだかちっこくて緑色の髪で見るからにドジッぽいはわわなイメージ映像を背負い、モップを構えて突進するシルファ。
何故か来栖川のお嬢様、それも妹の方っぽいイメージ映像を背負い片脚を半歩引き腰を落とし、構えを取るミルファ。
二人の姉妹が激突する、とあるスーパーマーケット前であった。迷惑だから他でやれお前ら。
そしてこいつら伝統なのかロボット三原則なんて組み込まれてないので、人間が下手に喧嘩を止めようとすると酷い眼を見ることになりますので気をつけよう。
「貴明さん、どうして私だけ「さん」なんですかっ! ミルファちゃんやシルファちゃんは「ちゃん」で呼びますのにっ!」
「えーと、なんていうか、イルファさんはお姉さんっぽいというか、二人とは違う気がするというか」
「それは貴明さんにとって私は特別な存在と言うことですねっ! つまりそれは愛っ! 愛なのですねっ!! 貴明さんから私への愛の告白っ!?」
「「いや、それは無いから」」
「ところで誰や、ハートの9止めとるのは」
「このみは違うでありますよ」
「うちも知らん〜」
そのころの河野家では、トランプで七並べをしながら貴明と郁乃がイルファに突っ込みを入れていた。
「今日のお泊り会の夕食は、ご主人様にシルファのオムレツを食べてもらうのれすよっ!」
「こんなに苦しいのなら鮎などいらぬっ! と言うわけで、私が牛丼を作るのよっ!! 男の子なら牛丼なのよっ! こってりなのよっ!」
実にあほな理由での諍いである。
「このこの他数名はろーするんれすか。女の子にこってりはきついとおもうれすよ」
「太ればいいと思うよ?」←すっごくいい笑顔
「悪魔め……」
「悪魔でいいよ☆」
そして彼女らの傍らには、喧嘩を止めて好感度アップっ! などと考えて自爆かました荷物もちのためについてきたはずの雄二が転がっていた。
続かない。