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注意。
このSSはひたすら「その状況」を想像して妄想して萌え転がるためのものです。
ぶっちゃけテーマとかストーリーとか気にするな。(ヲイ)
それと「想いをのせて」「夢で会いましょう」とは違う世界、別の郁乃です。
なので向こうとのつながりは考えないよう願います。

ではどうぞ。

ToHeart2 - 郁乃との日々

書いたひと。ADZ

それは春先のある日、書庫での事。
用事が出来たため席をはずしているいいんちょ、もとい小牧姉こと小牧さんちの愛佳さんが置いていったアップルパイを郁乃と二人で腹の中に収めた後だった。
「耳が痒いわ」
愛佳さんが魔法瓶にいれておいてくれた紅茶を飲んでいる時、唐突に郁乃が言い出した。
「というわけで綿棒か何か持ってない?」
要求も唐突である。
「一般的男子高校生がそのようなものを持ち歩いていると思うのか?」
「思わないわね」
なら聞くな。だが俺は別のものならあったなぁと思い出しその事を伝える。
「何故か耳掻きならあるのだが」
「なんでよ」
「作業用の道具の入っている箱の中に何故か」
言いつつハサミやら両面テープやらの入っている道具箱から竹製、梵天付きの耳掻きを取り出した。
「姉ね」
「愛佳だしねぇ」
「まあいいわ。よこしなさい」
「うん、なんでいつも命令形なんだろうなとか思ったりするのが一往の先輩としての意見なのだが」
「なにを今更」
「尊厳とか色々と考えてしまいます」
「いいからよこしなさい」
そこでちょっとした悪戯心が湧き上がった。
うん、まあこういうコミュニケーションをとるのもたまにはいいだろうし。
「ふむ。渡すのはいいけど……今日は暇だし、やってやろうか?」
とぽんぽん、と膝を叩いてみる。
「…………え?」
しばしぽかん、としてからほんのり頬を染める郁乃。何故だ?
「いいの?」
「暇だし」
「作業は?」
「小牧さんちの次女さんが必要な機械壊しました」
「…………」
目をそらす郁乃。
「そしてお姉さんはどこぞに修理依頼に行きました」
「そうね、暇だし頼もうかしら」
明かに誤魔化している郁乃。
多少躊躇したものの、ソファーの上に乗るとその頭を俺の膝の上に預けてくる。心なし顔が赤いのが気になるが。
「以外と固いわね、あんたの脚」
「まあ、これでも一往男だし。筋肉ぐらいそこそこはついてる……ついてるよなぁ……ついてるよね?」
「んなことを不安に思わないでよ」
馬鹿な話をしつつ郁乃の耳掻きを始めた。
「痒いのはどの辺だ?」
兎角お客様の要望を聴くこととする。
「多分、前の方で、けっこう奥かしらね」
ふむ、と耳の穴の入り口付近から少しずつ進めてみる。
前というのは、まあ目鼻の付いているほうだろう。違ったら怖いが。
「ん、もうちょっと、奥……」
多少悩ましい声で言われて、手元が狂いそうになるが自制する。
言われたとおり少しずつ奥へと進め、周囲を探る
「あ……そこ……」
どうやらヒットしたらしく、あるポイントで郁乃が声を上げた。
俺は慌てずにその周囲をカリカリ、カリカリとかき、汚れを取っていく。
郁乃は痒みが解消できたのか、今はもう気持ち良さそうに目を閉じている。
最初こそ恥ずかしがっていたのだが、こうも気を許されると気分いいなぁ。
それから俺はちょいちょい、とかわいらしい耳を引っ張って穴を覗き込む。
多少のカスを見つけたのでそれを耳掻きですくい取り、テーブルに広げたティッシュの上にそのカスを落とす。
全体的にはわずかばかりの耳垢であった。
ある意味やりがいの無い耳である。いや他の人間の耳掃除なんてしたこと無いけど。
なので素直に思ったことを言ってみた。
「思っていたより綺麗だな」
「気をつけてるから当然でしょ」
「ほう」
どうやら普段からこまめに綺麗にしているようだ。男だとこうはいかないだろうなぁ。
ついつい面倒で放置してしまい、気がついたらとんでもなく耳垢が溜まってたりするし。
「恥ずかしいでしょ、自分が見えないのに人からは見えるところが汚れてたら」
「そういうものか」
「そういうもんよ」
目を閉じながらこちらと話しをする郁乃。その様子がなんだかかわいいな、なんて思ってしまうのはなんの気の迷いだろうか。
もうこちら側は終わりにして反対側をやろう。
郁乃に位置を変えてもらう。
カリカリ、カリカリ。先ほどと比べると会話もなく、反対側の耳掃除を進める。
「なあ、郁乃」
いい機会なので、前から思っていた事を話してみることにした。
「世話されるのが、心苦しいとか思ってるだろ」
「しょうがないでしょ。人の負担になるのは嫌なのよ」
「でも、お前の世話するのはお前の事が好きだからだぞ。だから負担とかに感じてたりしないんだから気にするな」
「…………え?」
何故か赤くなっていく郁乃。耳も赤くなってきた。はて? 先ほどよりも心なしぽー、とした表情になってきたし。
疑問に思いつつも耳掃除終了である。
「終わったぞ、郁乃。……郁乃?」
「…………あ、うん」
郁乃はしばらくぼんやりとした様子でいたが、やがてゆっくり身を起こす。
「ねぇ」
「ん、どうした?」
「あのね、うん。今度は私が、してあげるから」
「はひ?」
「貴明の耳掃除。私じゃ、嫌、かな?」
どことなく潤んだ目で見上げられました。
多少の問答の末、押し切られて今自分めの頭部が小牧さんちの次女の膝の上です。いや正確に言うと太もも?
肉付きの薄い郁乃ではあるが、やはり女の子の脚に頭を乗せるというのは緊張する。
スカート越しだか感じる暖かさ、脚も思ったよりも丸みがあり柔らかくて気持ち良いなぁ。
ついつい顔に血が集まってしまうが平静を装う。
何も言ってこないとこを見ると誤魔化せているのか?
と思っていたら俺の頭の天辺に手を当てて角度を調整、見やすい位置にしているようだ。
「じゃ、始めるから。痛かったら言ってね」
そういって郁乃は俺の耳たぶを引っ張りつつ耳の溝をゆっくり掃除していく。
普段そんな所は気にしていないのでやらないのだが、耳掻きが通り抜ける時不思議な心地よさを感じた。
「予想以上に汚れてるわよ。気をつけなさいよね」
ん、と軽く返事をする。なんだか身体がふわふわとしてきた。
一通り溝の掃除かが終わったあと、耳掻きの梵天で同じ箇所を軽く撫でていく。
ぬぅ、思わず目を閉じてその感触を堪能してしまう。
「それじゃぁ、そろそろ耳の穴に行くから」
おう、と弱く返事をする。なにやらぼんやりとしてきて全身から力が抜けているのだ。
カリカリ、と入り口周辺をこすりながら奥へと進む耳掻き。
たまに大き目の塊でもあるのかそれにこすれると位置を確認して、カリカリと掻きはじめる。
耳掻きの先端が引っかかり耳垢を引き剥がそうとするたびに、言葉に出来ない感覚が走る。
ピリピリとゆっくりとはがされて行くその塊。
なんとも言えない快感と開放感、そして喪失感を感じる。
郁乃は耳垢を落とさないように慎重に耳掻きを引き抜き、さきほどのティッシュの上に落とす。
俺はそれらを薄く開いた目で観察していた。
「最後は、いつ、したの? 駄目よ、ちゃんとこまめにやらないと」
いつもならこういうときは棘のある表現をするはずの郁乃だが、今日は何故か妙に優しい口調である。
そしてどことなく嬉しそうに作業を再開する。
ぬう、何かいつもと違うぞ郁乃。それはともかく気持ちいいなぁ。
「あ、動いちゃ、だめ……」
すいません、何か熱っぽい声なんですが?
そして片側が終わり、と思ったら最後に「フッ」と息までかけられてしまいました。やるなロ○ドベル。いや違う。
それから郁乃は向きを変えるように言ってくる。
もはやその耳掻きの虜になっている俺は、言われるままに向きを変える。
先ほどと同じように溝からはじめて、綺麗にしていく郁乃。
あまりの心地よさに深く息を吐いてしまう。
「あ…………あんまり強く息しないで」
今更なにを、と思ったところで気が付く。先ほどは右耳を上にしてテーブルが見えるようにして膝枕をしていた。
今は何も見えません。というか近すぎて良く見えません。スカートやら制服の生地が。
「いいいいいいい郁乃?」
「何も言わないで。続けるから」
そこでなんで俺の頭を撫でる? 頭頂部から額に向けて、ゆっくりと撫でていく郁乃の左手。
あう……耳掃除とは違う心地よさが。
そして隙を見てなのかともかく耳の穴へと侵入していく耳掻き。
小刻みに先端の返しを動かし、小さな耳垢をはがしていく。
先ほども心地よかったが今度もかなりのもの。丁寧に扱ってくれているのがわかる。
じわじわと奥に進み、着実に綺麗にされていく我が耳穴。
もうこのまま眠りたい。
「ねえ、その。気持ち、いいの?」
今更聞かないで欲しい。気持ちよすぎてなんか眠くなってきたぞ。
「そう、良かった。初めてだったから、人の耳を掃除するのなんて」
初めてでこれなのか。なんとも将来有望だな。嫁さんにして毎日やって欲しいぐらいだなぁ。
「あぅ…………」
途端手が止まる郁乃。どうしたんだ、続けてくれ。中途半端だと、落ち着かないし。
「…………うん、毎日は無理だけど、週に一度ぐらいなら」
何か言っているが、良く聞こえない。うぐ、大きいのを取られた。
やがて耳垢をとり終わったのか、最後に息を吹きかけてくれる。
幸せってこういうものかも知れない。
しかし、終わったはずなのに郁乃が声をかけてくれません。どうしたのか。動こうとしたら頭を押さえつけ動かないようにされた。
「あの。あのね、貴明」
だからなんでこう、いつもと違う声出しますか。
「わた、私も、好きだからね」
「はい?」
「今はまだこっち見ないで」
そのまま頭を抱きすくめられてしまい、ちょっと表現に困る二つの柔らかな感触に襲われ、あ、なんかいいにおいだなぁ、なんてしびれた頭で思いつつ何がどうなっているのか考えてみます。
えーと、俺が耳掃除してやっている時は普通に気持ち良さそうにしてたよなぁ。
で、俺が何か話しかけて、それから様子がおかしくなった、はず。
なんだったかな? 
確か、
『「世話されるのが、心苦しいとか思ってるだろ」
「しょうがないでしょ。人の負担になるのは嫌なのよ」
「でも、お前の世話するのはお前の事が好きだからだぞ。だから負担とかに感じてたりしないんだから気にするな」
「…………え?」』だったかな。
様子がおかしくなったのはその辺だったよな? はて、何故だ。

ふむ…………

…………

…………

…………

…………

…………

…………おおっ!

『でも、お前の世話するのは(みんな)お前の事が好きだから』
と言うつもりで『みんな』が抜けてたよ。
つまり、『俺が世話している状態での話→世話を焼くのは好きだから→みんな、が抜けてるからそれは俺一人を指す→河野さんちの貴明君は郁乃さんが好きです』
となったのか。…………おや?
すいません、他意はなかったんです。でもなんか今更訂正できません。どうしましょう?
いや嫌じゃないんですけどね。とちょっと混乱気味です。
そもそも郁乃は嫌がってるとかじゃなくて、むしろ嬉しそうにしてた? それはつまりそういうことか?
なんだ、いつもより可愛く感じるぞ、これがツンデレパワーなのかっ! てなんだそれは。
多少状況の整理が出来た頃、郁乃も落ち着いたのか腕の力を緩めてそのまま俺を見下ろす。
「あの、その、不束者だけど、よろしくお願い、します」
顔を真っ赤にして潤んだ瞳でそんな事を言ってくれました。
よろしくとまで言われてしまい、これはもう郁乃的に告白ですよね?

その時、俺は
1、受け入れる
2、ごめん、俺好きな人が
3、ごめん。俺、実は雄二の事が

いやとリあえず三番目はちょっとまて。なんで雄二さ? せめてタマ姉とかまーりゃん先輩とか女の子にしてくれよ。
とかく、ここは四番で。
「…………うん。俺は頼りないかもしれないけど、よろしく」

4、元々郁乃が好きだから喜んで受け入れる

形としては俺の方から先に言った事になるわけだけれど。
その時郁乃が見せてくれた笑顔は、多分一生忘れられないのではないかと思うぐらい可愛らしかった。
こうして一組のカップルが夕暮れの書庫で誕生したのでした。

その頃の図書室側出入り口。
「ラブラブね」
「らぶらぶだよね」
「入れないわね」
「入れないよねぇ」
「愛佳、紅茶でも買いに行こうか」
「でもお財布は書庫の中にあるし」
「どうしようか」
「どうしようね」
「あ、なんかイチャイチャし始めたわね」
「アツアツだね」
「初々しくもあるわね」
「顔赤くしながら河野君の名前呼ぶ郁乃、かわいいよぅ」
「姉馬鹿だよね、愛佳は」
「それほどでもないよぅ〜」
「いや褒めてないから」
愛佳さんと由真さん、覗き見中。

後日。

「いーくのん。どうよ、センパイとはうまくいってるっすか〜?」
「センパイ、つやつや」
数日後の放課後、郁乃と二人で下校しているとタヌキとキツネにつかまった。
つやつやって何さ。
「んん〜、手を繋いで下校とは、アツアツっすねっ!」
「センパイ、らぶらぶ」
ほっとけ。
どういう経緯でか、郁乃との仲が伝わっているらしい。……このみ経由か?
「でで郁乃さんや、どうだったのかな〜? センパイは優しくしてくれたかな〜。でもって気持ちよかったかい〜?」
何をだ、そこのタヌキ。
「うん。貴明は、(耳かきを)優しくしてくれた」
「………………………………へ?」
「(膝枕も)初めてしてもらったけど、気持ちよかった」
こういうときにそういう発言はお約束ですかっ!?
「これはびっくり。センパイ、なかなかやる」
「ヘッキーが、ヘタレカイザーなセンパイがいきなりそこまでっ!?」
そしてお約束な勘違いですかっ!?
郁乃もぽーとしてないでちゃんと説明してくれよっ! 今のは言葉足りてないよ!
「いくのんが、五段も六段も飛ばして大人への階段を昇り始めたっ!!」
「大変だ、これでは流石にこのみでも挽回できない」
「貴明の、ごーかんまーーーーー!!」
「るー☆ いくいくとたかあき、ラブラブラブや〜」
どこから湧いて出たんだ姫百合姉妹!!
でもそんな状況でもぽーとしたまま、手を握って離さない郁乃が可愛くて仕方が無い俺でした。

とりあえず、終わり。

ADZの言い訳。

はいごめんなさい、いきなり前回のものとは関係の無いものを書いてしまいました。
しかもなんかもう郁乃が原型留めて無いし。

ではまた、いつの日にか。まともな作品でお会いできる事を祈っていてくださいw

らいるの言い開き。
はっはっはっは、こんちくしょう郁乃が可愛いすぎるぜ!
ありか?ありなのか、こんなデレいくのんっ!
あれですか、「あなたが得損なった愛情を……私が全て注いであげるから」な青葉とか「またね、お兄ちゃん」な恋とか「へへ、しちゃった」な梗とか「わかったって言ってるでしょ。由飛……姉さん」な玲愛とか「も、もうその手には乗らなーい!」な杏璃とか、とにかくそんな感じの何かがアレを熱くさせるみたいな。(何言ってんだ)
母さん、ボク、ツンデレに汚されちゃったよ……的なそれっぽいのに毒された気がするですよ。

ともあれ、「違う世界、別の郁乃」ってことで前作の続きが公開されるのは決定ですね。これが続編だと言い切ってしまえばそれで済んだのに、そう言わなかったということは『夢で会いましょう』にはちゃんと別のデレいくのんが用意されてるわけで。
ここまで言っておけばもう居直れまい……ふふふふふ。

ADZさんへの感想や励ましなどは、
nao-sあとyel.m-net.ne.jp
へどぞー。