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ほしうた

ほしうた

Einschätzung

シナリオ=B|グラフィック=A|キャラ=B|音楽=B|総合評価=B

Überblick

はじめに

2008年はこれだけを楽しみに生きていたと言っても過言ではない(挨拶)。

ゆきうた」「そらうた」と続く「うた」シリーズ最新作。この後はどうするんだろう?「やまうた」とか「かわうた」とか?なんか、どこぞの中年向けPSゲームみたいな。

今回もネタばれがありますのでご注意を。

それはそれとして、ほしうたです。原画がフミオ氏だというだけでも買いなんですが、「そらうた」と比べるとやはりちょっと変わったというか。雑になったような気がしないでもないです。まあ、それでもキレイな絵なので問題はありませんけど。

音楽はまあまあ。この辺の評価は前2作が良すぎたせいかも知れません。特筆すべきはエンディングの「夏の終わり」でしょうか。
絵は前述の通り。舞台は今回珍しく瀬戸内海側ではありません(笑)。背景に相変わらず低めの山が見え、海岸が近いということもあってどうしても「また香川県観音寺市か?」と思ってしまいますが、静岡県だそうです。
ディスクレス起動はユーザー登録してパッチを充てることで可能。……別の手段もあったんじゃないの?って気がします。システム周りに不備なし。セーブポイントは10×9の90箇所。セーブメッセージを変更できるので便利です。

あ、ちなみにシステムボイスを変更できますが、梅さんのヤンキーバージョンにするとダメージでかいです(笑)。実際にやってみると、エピローグ見て感動した後にあの台詞がズギャーンと出てきますので。

登場人物

主人公は周防和彦。黒田旅館で仲居をする「おばあちゃん」に育てられ、その死の間際にななのを託され、ななのを自分が守ると堅く決意した好青年。菜乃に対する秋臣みたいな感じですね。ヘタレてなくていいです。
ヒロインは幼馴染で旅館の娘の結衣、義理の妹であるななの、車椅子の先輩翠、転校生お嬢様くらら、いたずら娘のれんげの5人。ななのがどうしても「ゆきうた」の菜乃に重なってしまいますが、あそこまで使えない妹ではありません。同様に、結衣のアホっぽさも「そらうた」の知夏まで至らないと言う感じ。
サブキャラは結衣の家の旅館と丸被りするリゾート経営社長令嬢、だけど嫌味なとこがなく敵愾心丸出しの結衣に対しても普通に接することができる亜里砂と、女好きでグラフィック上では色男なのに二枚目な洋介と、至ってまともな布陣。

さて、ではキャラ別レビューです。

黒田 結衣

珍しく幼馴染から攻略開始。

ズサーっと、などの妙な擬音が特徴の黒田旅館の一人娘、おバカで快活、亜里砂に対して敵愾心むき出しにするも軽くあしらわれて相手にされない、というか空回り状態。

夏休み前に部活を作ろうとするも、校則の前に断念。同好会だけでも何とか、ということで

「人数が集まれば、何かいい考えが浮かぶかも知れないし」
「そうかぁ?」
「『三人寄ればモジャモジャな知恵』って言葉があるでしょーが」
「なんだそれは……」
「毛深い知恵さんを、みんなで眺めるっていう意味よ」

とまあ、バイタリティだけはあるわけですが。はっちゃけっぷりが少し大人しいかなあ。
同好会員候補を7人集めたはいいけど、何の同好会なのかまったくわからない全員を前に、

「『恋愛同好会』とかいって、部員同士に恋愛を勧める会とか」
「そんなエロい女部長がいるような同好会、作るわけないだろーーーーー!」

和彦は「女が部長だ」なんて言っていないわけですが。
まあそんなわけで、部活をやるわけですから対象ヒロインである結衣以外との接点も多くなります。

洋介が結衣狙いだってことは、まあそれなりにあり得ると言えばあり得る展開ですが、途中までどうしても亜里砂の考えが見えてこない。というか、見えづらい。そういう風にしてあるんだろうけど。
和彦に近づいてみたり、かと思えば結衣の後押しをしてるような台詞をはいたり。

「……届くところにあるからって、いつまでも傍に置いておくだけだと、後悔するかも知れないってことよ」

プレイヤーの「亜里砂はいったい何がしたいんだ?」という疑問は、和彦も感じたらしくクライマックスではきちんと回答がでるんですけどね。
……ううむ、まさかそういうことになっていたとはなあ。

和彦の鈍感さもあり、すれ違いまくりでなかなか焦らしてくれるシナリオでしたが、鬱になるような展開もなくごく普通に幼馴染の関係を収束させてくれました。最後の最後に、ちゃんと亜里砂の件も片付いたし。いいんじゃないですかね、わりと。

雨宮 くらら

今回はほんと、「妹キャラは最後」という鉄則を除けばいつもとまるで違う攻略順でいってみたわけでして。
そんなわけで転校生なお嬢様、もちろんお約束として過去に何かあったに違いないくららです。

ルートスタートからいきなり、

「……いぬさんは、オコジョくんからのてがみをだいじにたたんで、こえをかけました」
「もう、だいじょうぶだから、しんぱいしないでね」

こ、これは……懐かしい。「そらうた」真奈と澪ルートでの絵本「ふたりのたからもの」じゃないですか。うたファンにはたまらないけど、うたシリーズをやってない人にはどうでもいいサービスがいいですねぇ。

選択肢の少ない(というより、ヒロインによってはヒロイン選択したら選択肢なしとかもあり)ゲームだけあって、選んでしまった後の展開は同じような内容でも微妙に違う人物・台詞で進めているのは芸が細かいですね。
部活をやる前に結衣が全員を集めようとする場面でも、結衣シナリオでは和彦と洋介に教室で言うのに対し、くららシナリオでは通学路で和彦とななのに言う、とか。

部活で描いてもらったポスターの絵が素晴らしかったので、黒田旅館に飾る絵を結衣に頼まれたくららが出した条件が、和彦に手伝ってもらうこと。
辛そうに絵を描くくらら。和彦とくららと絵の間にある何かがこのシナリオの核だと思いきや、そこはあっさりと。……なんかこういう肩透かし感、どこかで味わったような気がする。

本当の問題はありがちなものでした。財閥だなんだと出てくる場合のお約束というか何というか。
ただ、多くの場合解決するためのきっかけとなるサブキャラとしての男友達の代わりに、メイドの梅さんを絡ませたことで、ちょっとだけ雰囲気が変わってる感じはしました。

くららを拉致りに来た、継母のSPに和彦が「ぼっこぼこにしてやんよ」とばかりにたこ殴りにされて気絶したところでエンディング、というのはどうかと思いましたけどね。まあ、エピローグで幸せにはなっている……けど、その間があまりにも抜けすぎてるので物足りない気はします。

山吹 れんげ

岬の洋館にお手伝いさんと住み、町に降りてはいたずらばかりをする幼j……少女。

悪びれない・可愛げない・胸ないの3無主義。「ゆのはな」のゆのはと同じで、このシナリオは最初の方のあまりにもえげつないキャラ設定を超えられるかどうかが鍵ですかね。「なんだこいつは」と思ってしまったら、もうプレイもしないって人もいそうなので。でも、そこを何とか耐えて欲しいですね。だって、

巫女姿のれんげが萌ゆる。じつに。

部活動に参加して「ほしうた」について書かれた門外不出の奇書を読みに、沙月神社に忍び込むんですが、そこでの巫女コスプレが実にいい。

「でも、それってきっと優しくされたからだわ。あんたが無邪気にシャツ着てけ、なんていうから、わたしきっと勘違いしてるのよ」
「だから何を言ってるんだっての」
「キスしたいのよ!」

これで堕ちないやつがいたら見てみたい。

どうしても「そらうた」の葵とダブっていたんですが、そこまで重い話ではないのかなと安心していました。途中までは。んがっ、やっぱりやってくれるんですよねぇ……。
「ほしうた」の伝説を一緒になって調べて、ネットからテレビへと伝わっていくところでは案外いいムードで進んでいくのに、唐突にれんげから突きつけられる「もう会わない」。
そろそろ核心か、とこちらも心の準備をしていたんですが、それでもやられてしまったですよ。

「優しいこと言わないで」
「*****、つらくなるから」

前向きに生きるようになったことが、れんげシナリオ的にはハッピーエンドになるんでしょうけど……あまり救われないシナリオですね、これ。「ほしうた」に頼らないとこはいいんですけどね、あまりにも短すぎて。エピローグもなかったし。

木ノ下 翠

車椅子のためか、握力でリンゴを粉砕できる翠先輩。
和彦たちと出会ったのは、同じ町に住んでいながらも比較的遅い。……でもさ、確か結衣が「クラスが少ないからクラス替えしてもたいして変わらない顔ぶれになる」とか言ってたような。だとすると、同じ学校に通っていて顔見知りでもないってのもどうかと。ま、いいんですけど。

水泳で全国大会入賞を目指していた矢先に起こった交通事故、そこで落ち込んだ翠がどうにか立ち直っていく過程がきっちりと最初の方で描かれているのはいいですね。翠と主人公の今の関係にもスムーズに入っていきやすいし。
その過去があるからこそ、翠が手伝いをできるだけ受け入れずに自力で何でもしようとすることと、それを変な遠慮と捉えて出来ることはやらせて欲しいと考えている和彦の気持ちも、あっさりと理解できる。

満足行くシナリオでした。
和彦も翠も、お互いが壁を作って遠慮しあっていたから、すれ違いが生じてどちらも踏み込むタイミングが掴めなかった。そのことを崩すきっかけとかその後の展開とか。
101回目のプロポーズじゃないんだから、ってのはありましたが、それはそれで良し。

周防 ななの

義妹は正義。

マンゴーメロンパン(って、それ「メロン」パンなのか?)とカメが好きな義理の妹。頭に乗せてるカメ次郎が海ガメなところが素晴らしい。菜乃と違って出来ない妹ではないけれども、天然のおバカさん。これもまた素晴らしい。

「……食欲以外の二大欲求を言ってみろ」
「入浴と半身浴?」
「……どっちも違うっつーの」
「分かった!混浴と岩盤浴だね!」
「……風呂から離れろよ」

共通ルートいきなりからこれですから、期待も高まろうと言うもの。貧乳という設定の割に、制服姿の立ち絵がそう見えないのはキニシナーイ。
妹スキーフィルタを通せば貧乳に見える。見えるったら見える。

「えっへん!こう見えてもわたし、ヨメと折り合いの悪いシュウトメくらいには、お料理にうるさいんだよ」
「鶏の卵をフライパンで熱した料理と、大豆を発酵させた食品のセットだよ」

ま、兄妹ですからねぇ。ルート以外でも登場が多いのは義妹の特権というやつでして。

で、肝心のななのルートですが、他のルートでもそうだったように、やはり「おばあちゃん」の一周忌でのななのの落ち込みというか。他ルートでは2日もすれば元に戻るという感じでしたが、独自ルートはそこを深く掘り下げつつ2人の関係が変わっていくことを描くと。

このルートでもやはり自分の気持ちに気がつくのは和彦から。うん、やはり珍しいですね、このパターンって。

「それで、和彦にとってななのは、『妹』と『女の子』のどっちだったわけ?」
「その二択だと、どちらとも言えないな」
「そ、それはどういうことよ?」
「俺にとってななのは、『妹』でも『女の子』でもあるってことさ」

そう、義妹は正義(関係ねぇ)。

そこに気づいた和彦は偉い!
あ、ちなみに「いもうと」と入力して「義妹」と一発変換されるようなPCを持つ自分が、社会生活不適合者であることは自覚済みですから、突っ込まないでください。ていうか突っ込むな。むしろそんな目で見るな。見るなよぉぉぉぉぉっ!

「えっと……その手はなんだ?」
「それはもちろん、旅館まで手を繋いでいこうっていう合図だよ」
「はぁ!?」
「なんだかね、今は少しでもお兄ちゃんに触れていたい気分なんだよ」

ほほう。ななのは可愛いなあ(ぼたぼたぼた

「はい、お兄ちゃん。妹120パーセントごはん、お待ちどうさまだよ」

ふふ、ななの120パーセントごはんか、いいね。(だばだばだば

今回はこれ以上のネタばれは避けておきます。続きはゲームで充分楽しんでいただくとして。感想は、と言えば特別にデカイ山場はなく、主人公もヘタレておらず、幸せな2人が描かれてますのでかなりお勧め。……ま、平坦と言われればそうなのかも知れませんが。

総評

シナリオの判定が微妙なところです。というのも、凄く短いので。短い=描き込みが足りない、といちがいには決められないのですが、今回に限っては物足りなさを感じるのは確か。
お互いの気持ちとか、タイトルの意味とか、その辺りはしっかり回収できるようなシナリオになっていますが、2人が結ばれてからというのが圧倒的に足りない。特にれんげシナリオなんかはその物足りなさがシナリオへの不満に直結してしまいます。
他のシナリオでも勿論そうですが、多少なりとも問題を解決したのなら、ここから幸せな2人が見たいと思うもの。そこがまるで(もしくはほとんど)書かれていないというのはちょっと……いえ、だいぶ不満ですかね。

それ以外ではいいと思うんですけどね……ただ、どうしても、

  1. 「ななの」→「菜乃」
  2. 「結衣」→「知夏」
  3. 「れんげ」→「由紀」(シナリオ)・「葵」(キャラ)
  4. 「くらら」→「雪那」

という具合に被っちゃうものだから、それぞれの劣化版のように思えてしまいます。単体でそれぞれを見てみれば決して悪くはないし、寧ろ「れんげ」以外はすっきりとしてハッピーエンドですからそこは前2作よりもいいんですが……だからこそ、そのハッピーエンドを強調できるような、「その後の2人」的な部分をもっと書いて欲しかった、と思います。

幼馴染のこととか。

ぶっちゃけ、結衣を最初にクリアしたのは失敗だったかな、と。

子どもの頃のこととかを見ていると、結衣はずっと和彦のことを気にかけて支えてくれていたわけで。そんな幼馴染がくららルートとかで別ヒロインとうまいことやってることを知った時に、僅かでも沈んだ様子になるってのはちょっと救われないよね、と思ってしまうわけです。
特に亜里砂のこともありますし。

そんなわけで、やっぱり義理の妹とか幼馴染とか、そういう時間を積み重ねてきたヒロインというのは、やっぱり最後にしておいた方がいいよなあなんて改めて認識しました。

主人公から

大体ギャルゲなんてものは妄想を満足させるためのものなわけでして。や、そうじゃないって場合もあるんだろうけどさ。
だから殆どの場合、主人公が何もしなくてもヒロインが勝手に好きになってくれるという、ご都合もここに極まれりと言った展開が多いんですが、「ほしうた」はだいたい主人公側の心情もきちんと推移してくれてるし、感情の在り所も告白も、きっちり描き込まれていたのではないかと思われます。

意外と珍しいんじゃないですかね、主人公がヒロインを好きになるタイミングがちゃんと書かれてるとか、主人公から告白するのが多いってのは。

Empfehlung

お勧め

「ゆきうた」「そらうた」をプレイしていて、重めな話を気に入った「うた」シリーズのファンにはあまりお勧めできないかも知れません。ただ、前2作よりも爽快なハッピーエンドですので、「うた」シリーズのファンだからこそ、次は明るいハッピーエンドをという方には絶対お勧めです。

鬱ゲーではありませんので、基本的には万人にお勧めできるゲームですね。

推奨攻略順

「ほしうた」というタイトルが他のシナリオと違う意味でしっかり絡んでくるのは「ななの」シナリオであるということで、「ななの」は最後ですね。
「幼馴染のこととか」で述べた理由で、結衣はその前。重めの話は「れんげ」のみで、ヒロインの環境が大きくのしかかってくるのは「くらら」シナリオ。それらを考慮すると、

【くらら】→【れんげ】→【翠】→【結衣】→【ななの】

れんげシナリオを見てしまうと、どうしても他ヒロインルート(特に「ななの」シナリオ)で出てくるれんげが気になってしまいますので、重めのが最後でもいい、という方には、

【くらら】→【結衣】→【翠】→【ななの】→【れんげ】

という攻略順もあり、かも知れません。基本的には上の攻略順をお勧めしますが。