lisianthus.me.uk

index > review > サナララ

サナララ

ねこねこソフト

Einschätzung

シナリオ=S|グラフィック=A|キャラ=S|音楽=S|総合評価=S

Überblick

はじめに

とにかくやってください。今すぐ購入してください。

アニメ、ゲーム、小説、映画、何もかもを含めて、どうしても1本だけ最高と言えるものを挙げろと言われたら迷わず「サナララ」を挙げます。

このゲーム、なんかものすっごい好きなんです。どれくらい好きかっていうと、膨大な時間をかけてFlashを作ってしまうくらい好きです。Flashページをご覧頂ければわかるかと思いますが、サナララの希未Flash、これ実はフルコーラス+αで6分近く、5.4MBもあるんですw

あー、まあつまり、特に希未シナリオがいいってことで。ALMA〜ずっとそばに・・・〜の梗シナリオではこう言ってますけど、これはあくまでも理想に対してであって、サナララの希未シナリオのラストがダメってことではないんです。特に、希未は「おまけ」でその後が描かれており、きっちり補完されてること、本編でも、2人ともどことなくお互いのことが記憶の片隅に残っていそうな様子であることなどがあるので、まったく問題なしなのです、はい。

そんなわけでサナララです。システムはNScriptですがメニューもきっちり作られているので不満はありません。寧ろ、1回クリアするとそれぞれ読みたいパートからいけるようになっているのは非常に親切設計。セーブ要らずです。

そして何と言っても音楽。使われている音楽すべてが非常に素晴らしい。1曲も「これはちょっと」と思う曲がないです。特に「5月の空」「春風」「浮き足」などはもう……音楽のためだけに買っても絶対損しないゲームと言えましょう。まあ、サントラも出てますけどね。

おっと。ついサナララのことになると熱が入ってしまいますね。……どうせですから、システムの説明なども合わせて全部やっちゃいましょうw

システム

一生に一度のチャンス「お願い」を叶えるために「ナビゲーター」がお願い対象者の下にやってくる。いや実際は逆で、お願い対象者がナビゲーターに引き寄せられる。「ナビゲーター」はお願い対象者以外には見えているものの存在をほとんど認識されない、要するに「とてつもなく影の薄い存在」となっており、対象者のお願いを叶えた後、「お願い」に関する記憶(対象者や自分がナビゲーターであったこと、お願いを自分も叶えて貰ったことも含めて)を忘れる。

お願いにはお試し期間が存在し、簡単には信じられなかったり願いごとを急には決められない人たちに1週間の猶予が与えられる。

Story:01「のぞみ」ではナビゲーターに人見知りが激しく、異性の前で何も話せなくなってしまう希未、お願い対象者に1学年上の和也が選ばれ、お試しに「ずっといっしょに」と願ってしまったせいで1週間を2メートル以内の距離で共に過ごすことになってしまう。

Story:02「Sweet days,Sour days」では幼馴染同士がナビゲーターと対象者の関係に。

Story:03「センチメンタル・アマレット・ネガティブ」は対象者の三重野に、ナビゲーターには陸上からドロップアウトしてしまった高畑。

Story:04「“Summer Holiday”」では絵を描くことに挫折してペンキ塗装の職をいい加減にこなしている洋一に、由梨子がとんでもないお試し願いをする。

この、関係者が一切を忘れるという部分が別れを予感させるという推測を容易にすると同時に、適度な緊張感をシナリオに持たせています。これが下手な脚本だと安直に忘れてしまうという悲しさだけを強調した後味の悪いシナリオにしてしまったり、または緊張感を持たせることに失敗してただ予想通りの詰まらないシナリオになってしまったりするのですが、「サナララ」はそこを完璧にクリアしています。

グラフィック

頭が大きいと言われれば、確かにそうかも知れませんwあまり意識しなかったし気にならなかったですけどね。他のゲームに比べて立絵が画面に占める比率が高い、つまりそれだけキャラクターが大写しになるわけで、それはイコール立絵に手を抜けない、と。

絵はとても丁寧に描かれていると思います。

【のぞみ】

とにかくコレです。サナララと言えば「のぞみ」です。そうだって言ったらそうなんです。

最初のストーリーだけあって、この「お願い」システムについての説明もしなければいけないんですが、その辺も上手くまとめています。お願いが叶うレベルというか範囲についてだとかも。

希未はあまりの人見知りのせいで、友人の「ゆうこちゃん」以外とはまともに話もできない。異性だなんてもっての外で、父親以外と正面から向かい合って話すなんて論外。父親ですら2.7秒の記録しか持たない。そんなのぞみのお願い対象者がよりによって男の和也。しかもその和也のお試しの願いが、「ずっといっしょに」。

そこから2メートル以上離れられない、つまりこれがお願いの効果範囲でもあるわけですが、一緒に暮らさざるを得ない生活をお試し期間の1週間過ごさなければならなくなってしまう。上手い、と思うのはここでお願いの効果範囲とお試し期間をうまく利用し、プレイヤーに理解させていること。そしてそれを説明的にならないようなテキストで表現できていること。それに人見知りの希未を絡めて、スムーズに展開していきます。

最初はただ軽いだけの和也も、希未と一緒に1週間を過ごし彼女の悩みとも向き合っていくことで少しずつ変わっていく。

Ever17と並んで、唯一総合S評価の「サナララ」ですので、これもやはり詳しいネタばれは避けますが、ナビゲーターとお願い対象者が、それぞれ何かを抱えていて、そしてそれはゲームでありがちなトンデモないことではなくて。普通の人が普通に抱えていそうな悩みだったり、本人にとっては悩みですらないようものであったり。

劇的に変わることもなく、ただ少しだけ、ほんの少しだけどこかが変わったような気がする、そしてその成長が、誰かのことを思い遣れるようにする。和也は最後近くまで、そういった自分の変化を露にすることがありませんでしたが、袖を引っ張る希未に対する態度の些細な変化などからも少しずつ変わってきていることが伝わってきます。

プリンス床ホテルとベッドとの間でのお話。再び、その同じ時間と空間を共有することができなくなることを示す「本お願い」。少しだけ変わった希未と和也、けれどもお試し期間は過ぎていき、本お願いの受容と共に彼らの関係も、和也を真っ直ぐに見ることが(少しだけ)できるようになった希未も、和也の気持ちも何もかもが失われてしまうという焦り。

すべてが無駄なく調和もとれており、エピローグではもう、心が洗われるという表現以外にはないんじゃないか、と思えるような爽やかさが残ります。

【あゆみ・三重野・由梨子】

それは続くStory:02「Sweet days,Sour days」、そしてStory:03「センチメンタル・アマレット・ネガティブ」でも同様で。あゆみへの気持ちの変化に気付いて動揺する雄司と、その雄司を気遣うようになったあゆみ。「センチメンタル・アマレット・ネガティブ」では特に「ほんの少しの成長」がきれいに描かれており、三重野の「位置について……よーい、ドン」では不覚にも涙が出そうになりました。そして、サナララのタイトルの意味が明確になる由梨子シナリオでは、ナビゲーター歴半年を誇る(笑)洋一が、ここまでの高校生(注・自称18歳以上ですw)ではなく社会人なだけに、こうしたちょっとしたきっかけで大きく成長した姿を見せ、最後のシナリオ、タイトルの意味を明かす、という大役をきっちりとまとめきっていました。

時間というものの使い方も非常に上手い作品です。のぞみシナリオでは曜日で推移しましたが、あゆみシナリオでは時間の推移そのものが無駄に。三重野シナリオは夜から明け方までの時間、最後の由梨子はあゆみに近いでしょうか。

登場人物たちの変化、成長と言っていいのかどうか微妙ながらも少しだけ誰かのことを考えられるようになる彼ら、その辺りも含めて是非ともプレイしてもらいたい作品ですね。

う〜ん……どうにも、のぞみ先生の素晴らしさを語りきれてない気がするので、「適当に生きるな!」でエントリされてるこの記事をご参照ください。私なぞより、よほどきれいに上手くのぞみ先生を表現されておられます。

Empfehlung

お勧め

捻くれた人、何かに対してどうしてもケチをつけなければ生きていけない人以外であれば、すべての人にプレイしてもらいたいです。特にお勧めなのは、正統派王道学園シナリオに飽きたという人かなあ。

推奨攻略順

制御がかかっていますので、攻略順はありません。