シナリオ=B|グラフィック=A|キャラ=A|音楽=B|総合評価=B
待ちに待った「ほしうた」続編。金額も内容も単純にファンディスクとは言えないレベルなので、これは続編と考えていいと思います。
メインヒロイン5人のアフターストーリー+「小梅」「聖子先生」「亜里砂」にお約束のハーレム(?)ルート「文化祭ストーリー」+30本のショートストーリー+おまけドラマなどが入っていますので、納得の値段。例の如く壁紙とかシステムボイス(使ったことないな……)などのおまけも充実。立ち絵&背景鑑賞が実装されたのはいいですね。
「うた」シリーズはメインヒロインのうち誰かが必ず死ぬ、もしくはそのことを宿命づけられているため辛めの点数をつけているんですが(これがなければ「ゆきうた」「そらうた」「ほしうた」はAランクにしてたと思う)、今回はファンディスク的な要素もあるためか、あまり感じさせない出来でした。
システムは相変わらずのほしうた仕様で不備なし、OPは音楽もムービーもいいですね。特に中盤サビ前の全員のシーンはいいシンクロっぷりです。EDは茶太の「たそがれ空」、こちらもかなりいい曲なので必聴。EDがフルコーラスという荒業ですが、苦にならないほど。FrontWingはあれですね、ゲームとかシーンにあったOP・EDを作ってくるし、曲にあったムービーも用意してくれてるから安心して見られますね。
そうそう、新衣装の冬制服やれんげの秋用私服なんかもかなりいいですねー。
結衣・くらら・ななの・翠・れんげ、「ほしうた」ヒロインのアフターシナリオ。
結衣アフターは恋人同士に見られないことに業を煮やした結衣が色々暴走する話。結衣っぽいと言えば結衣っぽい。で、その暴走デート中に見つけた指輪をプレゼントするために、お互い黙って和彦は旅館の仕事を増やし結衣は亜里砂のホテルでバイトして、というある意味アフターシナリオとしては無難な感じのシナリオですね。
学校での日常にはサブキャラたちもしっかり絡んでくるので、アフターらしい幸せでほのぼのした雰囲気がよく出ていたのでは。
「この間みたいに、おんぶしてやろうか?」
「えっ?」
「よっと」
「……」
「この前より、ずいぶん軽いな? ダイエットでもしたのか?」
「あんたが担いでるのは望遠鏡だろー!!」
翠アフターでは、鉄平に言われて和彦・ななのの周防家に居候することになった翠が水泳でスランプに陥り、それを何とかしようと和彦が鉄平と「ほしうた」を翠に見せるために動く。ななのと鉄平以外はそれほど出番がありませんが、これもまあ無難な話ではありましたね。
容易に予想できる展開なのは結衣シナリオと同じですが、多少展開に強引なところがあったかな。ラスト付近で翠視点になり、地の文でも翠の音声が入ることと、『ほしうた』の解釈が入ったのは良かったと思いますけど。
「もしかしたら、ほしうたなんて最初からなかったんじゃないかって」
「えっ……」
「きっと、ほしうたのおかげで起こったって言われている奇跡は、相手を真剣に思う気持ちが起こした純粋な結果で、その時起こった偶然が、『ほしうた』として語り継がれてきただけなんじゃないかって」
「……っ」
「だから、これが俺にとっての『ほしうた』」
「和彦……」
アフターの中でも突出してよかったのはくららシナリオ。コンクールに出品した絵が入賞し、部活でも楽しくいちゃいちゃして幸せな日を送っているところに継母の環が来る。以前(本編)とはまるで違い、くららと普通の生活を過ごし、くららのことを知っていこうとする環に、小梅と和彦は訝しげだったが、くらら本人は環との生活を楽しんでいる。
最終日、入賞したくららの絵を見て、本当の家族になれそうになったところで環からここへ来た本当の理由が告げられる。
これ一本とって見ても、「ほしうた〜Starlight Serenade〜」はファンディスクじゃなくて続編なんだなあ、と思える素晴らしいシナリオでした。
「私もその、”キャッキャウフフ”をやってみたいんです!」
「や、やるのはいいけど……どうすればいいんだ?」
「ここが海辺ということを考えると……まず、私が波打ち際を走り出します」
「はぁ……」
「それで、和彦くんが逃げる私を追いかけ、捕まえて抱きしめるのが”キャッキャウフフ”だと思うんです!」
「はぁ……」
ないんだろうなあ……「うた」シリーズだしなあ。と思いつつも、れんげが劇的に快復するとか新しい治療法が見つかって最期を考えなくてもいい体になるとか、そういうことを期待してしまうれんげアフターですが。
……ないですか、そうですか。そうですよね、「〜うた」ですもんね。ああ、わかってたよコンチクショー! でもつい期待しちまったんだよ!
まあ、シナリオそのものはそんなれんげの「死」を予感させるものはありません。柏村氏の娘であるミユキと仲良くなって、ミユキが父親に謝るのを手助けすることによってれんげが柏村氏との再会を(柏村氏にはそれとは知らせずに)果たす、というストーリー。
あ、このれんげシナリオだけ、まだ夏の話です。
「……やっぱり優しいのね、あんた」
「その言葉、そっくりそのままお返しするよ」
「バカね……”優しい”なんて、わたしに一番似合わない言葉なのに……」
俺は、いつか必ず訪れる終わりを迎えるまで……世界でただ一人、この涙を受け止めることができる男であり続けたいと思った。
お待たせしました、我らが義妹、ななのアフターです。
とは言え……今回、一番がっかりしたのがななのシナリオでした。や、ストーリーそのものは割といいんですよ。よくできていると思います。が、いかんせんこれは「ななのシナリオ」というより、「スエさんシナリオ」です。
無論、頑張り屋さんで一生懸命なななのの姿に萌えるのが正しい義妹教信者の在り方だとはわかっているんですが……でもなあ。
旅館に連泊しているスエさんという難しいお客さんのクレーム(?)対応にわたわたしている時、ななのがお世話係を買って出て、スエさんのクレームに捉えられがちな言葉に真摯に対応していく。自分たちに至らないところがあるから、スエさんに言われるのだという根本のところから見直して、黒田旅館全体が以前(=スエさんが若い頃に泊った頃=ヒナおばあちゃんが若い仲居として働いていた頃)の黒田旅館になっていく。
部活のメンバーも引っ張り込んで、スエさんに最期の楽しい思い出を作って貰おうというななのの心意気がまた可愛らしいのです。
……でも、これななのシナリオじゃないよなぁ……話はいい話なんだけどなぁ。
「う〜ん……この問題は、式を代入して解く形式だよね?」
「そうだ。それに代入する公式はなんだった?」
「えっと……秋の連休+ETC休日1000円=渋滞?」
「嫌な公式だな、それ……」
「じゃあ、コンビニの見切り販売許可+賞味期限の迫ったお弁当=半額?」
「それはありがたい豆知識だが、そんな公式を必要とする数学の問題は100パーセント出ない!」
「あぅあぅ……」
待ってました!の新ヒロイン、亜里砂シナリオは期待通りの出来。
パソコンを買った亜里砂が和彦に設定を頼み、そのパソコンで美星町観光同好会の活動を、和彦と2人だけでやってみんなを驚かせよう、というところから。
紅葉マップを作り、沙月町で配布したはいいけれども、折角作ったマップが色んなところに捨てられていたのを見てガックリする亜里砂。……まあ、仕事でやってるとそんなのはしょっちゅうというか、ある意味捨てられること前提でデザインすることすらあるので、いちいちそんなことでしょげてらんねぇだろ、とか思っちゃんですけどね。
塞ぎこんだ亜里砂のために、和彦が中心となって部員全員で配布作業を行う。それを見て持ち直した亜里砂だったが、今度は別の商店街に捨てられていたことで商店街の人からクレームが入り……このシナリオのライターはサドかっ?と思うほど亜里砂が追い詰められていきますw
最後の最後は考え得る最高のハッピーエンド。こういうのは秋色恋華の専売かと思っていたけど、やってくれますねー。
で、下のシーンがあるからこそ、「文化祭ストーリー」が生きてくると思われます。
「およ? 亜里砂ちゃん、ずいぶん和ピコのことかばうね?」
「そうですか?」
「亜里砂ちゃん、もしかして、和ピコのこと好きなの〜?」
「はい」
「え」
さて、お次の小梅シナリオは楽しいですよ。こういうキャラだからシリアスには傾倒できないんですが、そこがいい。ちょっとからかうつもりが和彦に怪我をさせてしまい、身の回りの世話をするということで周防家に住み込んで学校やバイトにまで着いて行く小梅。
失敗したり叱られたりするたびに、ただの暴力女でない、努力で色々なことを乗り越えてきたのだということがシナリオの中で自然にわかるように作られています。これはいいですね。翠アフターとは対照的に、すべてに無理がなくスムーズに進められるシナリオでした。
どシリアスもないし、ちょっとシリアスなのかな、と思ってもちゃんとギャグで〆てくれるので、楽しんでプレイできると思いますよ。
「エヘヘ、一学期の成績が悪かったから、さりげなく勉強してるんだよ……ねっ、小梅さん?」
「おう」
「小梅……ななのに何か教えたのか?」
「ちょっと漢字を教えてやったぜ」
「漢字?」
「うん。『仏恥義理』と『夜露死苦』を漢字で書けるようになったよ」
不安だったのは聖子シナリオ、どうしても先生と生徒ってのは同じうたシリーズの「ゆきうた#弘美シナリオ」の悪夢が蘇るわけで。
でもプレイして一安心。聖子がきちんと教師やってますし、和彦もブレてないですね。割と後半まで2人ともブレずに教師と生徒をやっているので安心です。聖子先生が教育にかけている思いも、この短い中できちんと入れてあるのも好印象。……現実に、そこまで生徒のことを考えて仕事してる教員がいるのか、というのは別として。
始業式・夏・部活と元の関係に戻ったままで話を進め、結局卒業するまで待った、というのもこういう教師と生徒ものでは珍しい。いいエンディングでした。
「偉くなったり、お金持ちになったりしなくてもいい……人の痛みや悲しみがわかる人間になってくれれば、それだけでいいの」
合計30本のショートストーリー。OPの自転車の話みたいなどーでもいい話や、「ぷんすかです」と怒るくららをただ見てるだけのアホっぽいものなど。……そう言えばニコで「このみの『えへ〜』をただ集めてみた」って言う神動画があったな……。
まあ、それなりに楽しめる30本だと思います。ちゃんと声があててあるのもいいですよね。おまけのショートはボイスなしってゲームもありますし。
地方では文化祭より体育祭だそうです。首都圏にいると考えられないことですが。文化祭は盛り上がるけど、体育祭って盛り上がらないよね? 体育祭って参加した記憶もないし……。
とまあ、それはともかく文化祭です。観光同好会が存続規定に引っかかりそうだ、ということで活動成果を挙げなくてはならないこともあり、文化祭で「ほしうた」の劇を行い、地域に伝承された民話研究及び月の浅瀬を含めた観光アピールにしよう、と。
れんげまで巻き込んで、というか自分から巻き込まれに来て、そのまま黒田旅館での合宿・お約束の脱衣温泉卓球・女風呂覗き・宴会と雪崩込み、いったい何の合宿なのかと疑問を感じるような騒ぎに。
「まあ、直接触らせてもらったから、まず間違いないと思うわよ」
「へー。そこまで言うなら、ズバリ言い当ててもらおうじゃない」
「いいわよ。まず、この中で一番大きいのがくららちゃんで、86センチ」
「あ、当たりです……」
「次がリサリサで85……続いて結衣が84……」
「……」
「や、やっぱり亜里砂に負けてる……」
「一年生組は、れんげたんが79センチで、ななのが77センチってところかな」
「う、嘘でしょ……?」
「翠ちゃん……恐ろしい子!!」
翠がいらん技能を発揮したり、酒が入って延々とくだらないオヤジギャグを続ける翠に笑い転げるななの、黙々と飯を喰らうれんげ、アワビの殻に愚痴る洋介、水のように飲みまくっても変わらない亜里砂とくらら、結衣に絡まれる和彦と地獄絵図に。
どさくさ紛れに結衣が和彦の好きな人を聞きだそうとするところから、少しずつ(ようやく)シナリオが動いていくわけですが、これがまたなかなか自然な流れでいいです。それがきっかけでヒロインたちが帰途、和彦と自分の関係を見直しだしますしね。
……まあ、和彦が風邪をひかないようにと、目の前で「ぶーん」と言いながら首を左右に振り、本人曰く「ななのクラスター」でウィルスをやっつけようとしているななのは別ですが。
え、そんなななのにも萌えるんだろ、って?
言うまでもない。
そんなこんなで和彦が台本を作り、ななのが衣装制作、亜里砂が総合デザイン、くららが背景美術、翠が照明演出、れんげが効果音演出、洋介が大道具と小道具、と役割分担も決まったところで全員一丸となって文化祭に邁進……したいところなのに役決めで紛糾。
村の青年役を和彦がやることに決まったはいいけれども、青年とキス(の真似をする)シーンもある相手の人魚を誰がやるのか。やりたいけど恥ずかしい、という気持ちから微妙に他の誰かにやらせようとしてごたつく配役。
そんな有様に、先のことも考えて一石を投じた亜里砂の言動が同好会の演劇を含む解体危機にまで繋がっていく、という話。
細かいことはプレイして頂くとして、このシナリオが「ほしうた」のメインシナリオになっても良かったんじゃないかと思う出来でした。色々と微妙な出来だった本編ほしうたにしても、こういう学園劇にしてしまえばそれなりに良作判定だったんだろうなあ、と。
……とは言え。
文化祭前日まで劇の練習ができていないってのは、幾らなんでも中止以外の選択肢はないんじゃないかと思いますが。
ミニゲームには神経衰弱・7並べ・スピードのカードゲームがありますが、「はぴねす・りらっくす」のようなレベルでは作られていません。声もありませんし。単なるおまけですね。
当然のことながら、「ほしうた」をプレイしていないと人物関係や背景がまるでわかりません。ほしうたを気に入った人なら絶対にお勧めできますね。
攻略と言っても……まあ、お好きな順で。