シナリオ=A|グラフィック=A|キャラ=A|音楽=B|総合評価=A
「ひだまり」が結構好きなゲームなので、期待しつつも「青空の見える丘」と「あかね色に染まる坂」と同じくらいに出来の差があったらどうしよう、と思ってなかなか手を出せなかったゲーム。特に、誰ぞが狙われるという、シチュエーションまで「あかね色〜」に似ているのが恐怖でした。
システムは快調。ディスクレス起動可、非アクティブ時動作可、ただしセーブポイントが50箇所と、選択肢が多い割に少ない気がしましたが。
オープニングはRMG。相変わらずです。素晴らしいです。ていうか最近、RMGがムービー作ってるかどうかでゲームの選択をしている自分がいるようないないような。
絵も相変わらずきれいだし、緊迫感のある画面での一枚絵も他のメーカーを凌駕していますね。前々作「ひだまり」でもそうでしたが、あっちはちょっとエグイ絵が多かったので……
結論から言うと、素晴らしい出来でした。同じような設定にしても、シナリオや演出、構成など工夫するとここまで違うものなのか、と思うほど。やはり食わず嫌いはよくないですね。
あ、今回は洒落にならないレベルでネタばれ全開ですし、ネタばれを見るとゲームの魅力が半減しますので、プレイ前の人は特にご注意ください。
見事なのは、キャラの配役と使い道、それにタイミング。最初から怪しいとは思わせないで、けれど怪しいかな、とプレイヤーが思った時点であっさりと正体を明らかにし、それでいて緊迫感や期待感を消失させない演出でシナリオを進めていく。いやはや、見事でした。
肝心の蓮シナリオの方は、まあ以上の内容ってことでw
蓮に着替えを除かれて男であることがバレてからの展開がちょっと急すぎる気もしましたが、よく考えてみるとあの後でまだダラダラと日常シーンや蓮・修史の思いなどを続けていると、完全に中だるみになってしまったでしょうね。
蓮のシナリオでありながら、他のキャラたちをうまく絡め、更に緊迫感を維持しつつ暗殺者たちの正体を明かさず、蓮と修史の関係や気持ちを描く、という全てがきれいにまとまりうまく魅せられていたような気がします。
今回はプレイ順ということで、2人目の雪乃。おお、これは凄いと思ったのは、雪乃の選択肢を選んで次の共通ルートになると、あらすじが出た後で共通ルートをスキップするかどうか聞いてくること。
これはいいですね。通常なら高速スキップして後から「あれ?どんな話だっけ」となったりするんですが、このゲームではそれはない、と。
さて、肝心のシナリオと雪乃ですが。
うわお。そうきましたかっ
これ、先にプレイしてしまうと危険ですね。まさかそう来るとは……完全にしてやられましたよ。蓮シナリオ以上にビクーリしたヨ。
微ツンデレと言った感じは後半になるにつれてデレのみになっていきますが、んなこたどうでもいい、と言いたいくらいに雪乃は魅力的に感じてきます。ストーリー展開は緊張感と臨場感の連続、その合間に腰砕けになりそうなギャグ、しかもこれが絶妙なタイミングで入り、不思議と雰囲気を台無しにしたりもしないんですよね。
修史と雪乃、2人の気持ちも無理なく描かれていて、最後に回した方が良かったんじゃないか、と思わせるくらい素晴らしいシナリオでした。メインヒロインが最高にいいと思えたゲームって、そう言えば久しぶりかもw序盤も序盤、OP前の伏線がこんなところに効いてくるとは!と驚くこともあり(そこまで大袈裟なもんじゃありませんが)、更には蓮シナリオをクリア済みな、メインは最後だろという人たちをも驚かせる、途中で挟まれる意味深な「星屑」と「小瓶」。
ちくしょう、最高だよ、AXL!
ちっこいの。ツインテール。我侭お嬢様。
「ちなみに、料理のさしすせそは?」
「さりげなく しずかに すばやく せいかくに ……そる?」
設定から言ってもギャグ多めって予感はしてましたが、やはり面白いです。ていうか、料理のナニを剃るというのだ?
雪乃と蓮を狙う組織の名称が出てくるのは、この鞠奈シナリオで。新興のギリシャマフィア『ファランクス』だそうです。……別に、名称なんてどうでもいいんですが。
と、話が脱線しましたが、鞠奈シナリオにおける唯一のレビューと言えば、
おいおい、鞠奈やばいくらい可愛くね?
でしょう。小生意気なガキんちょだったのが、いつの間にかドスゲェ可愛くなっているのはAXLマジックなのか?そうなんだな?ってくらいに。話の展開そのものは前2人と同様、意外な人物に狙われている護衛対象者を修史が守り切ってハッピーエンドなんですが、そこは蓮シナリオでもいいましたから省略。
変わり映えしないって言えばそうなんでしょうね、展開が同じですから。それでも緊張感とギャグのバランスとタイミングの良さ、キャラの萌え度が半端じゃないので全く問題なし。同じような展開だなあ、なんて思うことすらありませんでした。
声優がどうにもいいんちょだよなあ、と思っていたら、松田理沙=力丸乃りこでしたか。ギャルゲ系の声優は複数の芸名を使うので分かりにくいですね。(参考サイト→bpのごった煮:ここって便利ですよね。毎度お世話になっております)
……って、「ゆのはな」のほなみんもそうかよっ?!今更知った驚愕の事実。
それはそれとして。当然のことながら設子と有里は完全に異なるシナリオになります。詳細は下の凄いネタばれで書きますが、あれだけの戦闘シーンやトラップやら何やらで臨戦態勢をとり続けなきゃならないシナリオで、共通ルート時点から小出しにうまく恋愛要素まで表現しきるとは。
山あり谷ありで起伏に富んでプレイヤーを飽きさせず、それでいてキャラクターのバックボーンをだらだらとではなく、メリハリのある出し方で理解させ、恋愛ゲームとしてのシナリオも成立させる。
もう、脱帽もんですね。
……しっかし、この設子シナリオ、優の出番ほとんどなかったな。
「ひだまり」での小夜子の中の人。ううむ……。まあ、小夜子も最後までは単なる普通のOLだったし。
純粋な学院生ではなく、修史と同じエージェント、当然就職している社会人なわけですから、設子と同様、主人公がロリコンの汚名を被されることのないヒロインの1人w
絶対に有里シナリオは他とは違う、という予感はあったわけですよ。だって、明白に修史と同業だし。設子もまあ……アレなんですけど、それよりはほのぼのするだろうなあ、って。
で、期待通り、ほのぼのと普通の学園モノっぽさを醸し出してくれました。もちろん、いい意味で。それでも要人警護の緊張感は保たせて、あくまでも本筋から離れないのは流石ですねぇ。他のあの方々もきちんと絡ませて、ちゃんと最後はハッピーエンドへ。
ほのぼのさと初々しさと緊張感のそれぞれが、最も均等に組み込まれていたのはこの有里シナリオですね。
凄いネタばれだろうと、構わん、読む
要人警護・女装、この言葉でプレイを控えている人は、とりあえずやってみることをお勧めします。絵が「ちょっと濃いかなあ」と思ってしまった人にも。ほのぼのした学園ものは共通ルートと有里シナリオで、戦闘の臨場感は全てのシナリオで、萌えは鞠奈で、ツンデレは雪乃と鞠奈でそれぞれ充足してくれますから、どんな人でも「やらない」という選択肢はないでしょうね。
ああ、もちろんこれ以上ないくらいに完璧なハッピーエンドですからご心配なく。まあ……女装したままのエンドが多かったのはアレですがw
これは難しいところです。
【雪乃】【設子】【有里】と【蓮】【鞠奈】の組み合わせになりますが、どういう流れで攻略してもどこかで伏線が回収されてしまいます。ですから、ここは素直に進めて「ええっ?1本できちんと伏線回収して完結しちゃったら、こっちはどうなるんだよ」という疑問と期待を持って次のヒロインへ行き、見事な展開に感嘆すべきでしょう。
【蓮】→【鞠奈】→【雪乃】→【有里】→【設子】
メインと思われる雪乃だけは護衛対象者3名の最後にプレイすることをお勧めします。